何か説明を聞いていたり、勉強をしていたりするとしばしば遭遇する現象『何がわからないのかわからない』。
『全体像がもやもやして全くイメージがわかない』
『物事の前後関係が理解できない』
人と会話をしているときに起こると、それ以降の言葉は全く頭に入ってこない。完全にフリーズ状態になります。
君も一度くらい経験があると思います。
自分でもどこが不明点なのか、どこまで理解しているのかを説明できない。
そりゃそうです。何が何だかわからないのだから。
果たしてそれは頭の中がどんな状況におちいっているのか?
僕なりに解明してみました。
1.『何がわからないのかわからない』のメカニズム
これは一言で言うと『全体像が不明で、その内どこまで理解していてどこが理解できていないのかという切り分けができていない状態』だと思います。
パターンとしては大きく2つ。
1つは全体像をつかめない内に、いきなり個々の事象について聞いた場合。
もう1つは途中まで理解できていたと思っていたら、実は認識がずれていたという場合。
家をたてる場合を例にして考えてみましょう。
・全体像がつかめないのに細かい話をされた場合
例えるならば、どんな間取りの家かどの程度の大きさなのかを知らないまま、いきなりドアノブの形状について聞くようなものです。
この例の場合、僕たちは『ドアノブはドアに取り付けるものであり、ドアは玄関やリビングの出入り口に取り付けるものである』
という関係性を知っているのでそれでもある程度理解できますが、家(あるいは建物)ってそもそも何?という場合は全くイメージできないでしょう。
「ドアノブ」とはそれ単体で完結するものなのか?と思ってしまうかもしれません。
これは大抵の場合、話をする順序がおかしいために起こっています。
何かを新しいことを知る場合『全体像→詳細』の順に説明を受ければ全体像をつかみつつ理解が出来ます。
『森→林→木→枝葉』という流れならすんなり入ってくるでしょう。
全体像を聞くというのはいわば頭のなかに大きな箱をイメージして、そこに情報を埋めていくようなものです。
途中で突然その箱よりも大きなものが出てきたら、キャパオーバーを起こして混乱してしまいますよね。
この場合、最初にドアノブの話をされれば、そのサイズの箱しか頭のなかに用意できません。
その後で階段の話や屋根の話をされたら・・・。
全くイメージがわかず頭がパンクするでしょうね。
・認識がずれたまま理解していた場合
一方で、わかったつもりで実は大きく認識が異なっていたというパターンもあります。
例えるならば『平屋の家を作る』という想定で土台、骨組みを作り、ドアや窓を設置していく段階になってから「エレベータはどこ?」と言われるようなものです。
このようにそれまでの想定を完全に覆すほどに前提が大きくズレていた場合、どこから手を付ければいいか途方に暮れてしまいます。
この「どこからやりなおせばいいかわからない」と言う状態が『何がわからないのかわからない』状態と言えるでしょう。
これは最初の内に認識がズレたまま理解していたり、情報が抜け落ちていたまま進んでいくと後半になって起こります。
大抵の場合、全部理解できているということはなくて『実はなんとなくよく理解できていない部分が残っている気がする』まま進めているはずです。
つまり実際には予兆がちゃんとあって、ブラックボックスな部分を軽視している傾向にあります。
いやいや僕はちゃんと理解している!という場合でも心の何処かに『ほんとにあってるのかな?』という小さな芽があり、そこから無意識に目をそらしているはずです。
・共通点と根本対処
これらの例に共通して言えるのは『情報が抜け落ちている』という1点に集約されます。
他人の頭の中は見えないので、どの情報が抜け落ちているかが説明する側もわからないのです。
その結果、情報が漏れていたり、正しく伝わっていなかったりするわけです。
対策としては『あらゆる情報を漏れなく誰もが確実に齟齬無く理解できる形で完結に伝える』ことですが実現不可能です。
というわけで、対処療法となってしまいますが『何がわからないのかわからない』が発生した場合の対処法を考えてみます。
2.『何がわからないのかわからない』の対処法
とにかく『何がわからないのかわからない』が発生した時点で一旦すべての作業を止めます。
そのまま進んでも間違った方向に行くだけです。
『抜け落ちている情報が何なのか』『どこから間違っていたのか』を把握することに持てる力の全てを注ぎ込みましょう。
家を建てる例で言うならば、設計図を一つずつ地道に読み合わせする必要があります。
大抵の場合、どうしても直ぐに頭が切り替えられないので、一度インターバルをとって今まで作ったイメージを一度捨てることも視野に入れます。
頭を冷やすためにもインターバルを取ることは非常に有効です。
なぜならそれまでの思い込みを捨てて、一度ニュートラルな状態に戻さなければならないからです。
思い込みが捨てられないと(それが非常に難しいのですが)もう一度イメージを再構築できないのです。
3.実際のモデルケース
では、ここでケーススタディとしてシステム開発を例に話をしてみます。
例えば数人のチームで新商品開発のプロジェクトを進めているというシチュエーションです。
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ある程度製品仕様やスケジュールが固まってきて、実際に商品開発を進めている段階で、ふと、どうしても矛盾する仕様に気が付く。
なんど考えてみても納得のいく説明がつかない。イメージしている完成形とはどうしても辻褄があわない。
何か設計段階でおかしい点があったのか?改めて見てみるが特段おかしい部分はない。
疑問点を解消するため、とりあえずその矛盾点について、責任者に確認して回答を聞く。
しかし責任者の回答を聞いてももやもやは晴れない。むしろ新たな疑問点さえ浮かんでくる。
それらの疑問点について質問しても一つ一つはちゃんと回答してもらえる。
徐々に自分の疑問点が細かい部分ではなくもっと根本的な部分になってきているように思えてくる。
全体的な何となくのイメージはそうずれていないはず。細かい疑問点についてはそれなりの回答も返ってくる。
しかし自分の中のイメージと矛盾する部分とのギャップが埋められない。
どのあたりにギャップがうまれているのかわからない。
いったいこの人にどんな質問をすればもやもやが晴れるのか。
ああ、『何がわからないのかわからない。』
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どうでしょうか。
現実にもこういったことはよく起こります。
なにか自分の理解と異なるものがあるけど、その原因がはっきりしないわけです。
こういった場合、まずは一度休憩を挟んで頭を冷やしましょう。
往々にして自分が考えているよりもずっと大きな認識齟齬があります。
それはあまりにも想定よりも大きすぎて、細かい点を1つ1つ聞いていても疑問が晴れることはありません。
1から確実な部分と不確定な部分(自分で想像している部分や聞いただけの部分)を整理していきましょう。
先程もいったように、森→林→木→枝の順にどんどん範囲を狭めていきながら誤っている部分を修正していきます。
ここで焦ってはいけません。
根気強く1つずつ理解を深めていきましょう。
途中でイメージを修正するということは、その先はもっとずれているわけですから。
修正が入るたびにやはり一旦話をストップし、それを自分の中の理解と照らし合わせてイメージを更新します。
イメージの更新が終わったところで再度答え合わせを再開します。
そうやって一つずつ潰していくことでずれを解消し、自分の中の完成形のイメージをアップデートしていくわけです。
それをもとに再度色々な角度から仕様と自分のイメージとを比較し矛盾がないことを確認します。
矛盾が出なければOK。まだ出るようならばまだズレや漏れがあるはずなので同様につぶして行きましょう。
一通り終われば「何がわからないのかわからない」状態からは脱しているはず。
4.終わりに
というわけで『何がわからないのかわからない』という事象のメカニズムと対処法についてまとめてみました。
途中まで積み上げてきたものを一度捨てるというのは難しいことです。
頭にこびりついたイメージは簡単には払拭できません。
だからこそ重要なのは、理解ができなくなった時点で一度インターバルをとって、一度頭をニュートラルにしてから、もう一度最初から地道に認識合わせする。ということです。
誰にでも発生しうる現象ですから、落ち着いて対処しましょう。
補足
頭が真っ白でフリーズしているのも関わらず、お構いなしに追加の重要情報や変更連絡などを伝えようとしてくる人は要注意です。
この手のタイプは『相手のペースに合わせて会話する』ということができません。
そもそも相手の表情や言動をみれば『理解し納得できているか』『それとも腹落ちしていないか』というのはわかります。
が、自分が言いたいことだけを言うので「相手に正しく理解させる」というもっとも重要な点を完全に無視しています。
こういうタイプが相手の場合は正しい情報を得るのに非常に苦労します。
可能ならば他の人から情報を入手出来ないかを検討しましょう。
おしまい