転職にせよ退職にせよ今の会社を辞めるときには上司にその意思を伝えなければなりません。
『そうかわかった。非常に残念だが仕方がない。今まで本当にありがとう。新天地でも元気でやるんだぞ。体には気を付けてな!』
こんな具合に気持ちよく送り出してくれる様な上司はまずいません。
多くの場合は『え・・・?なんで?いやいや嘘でしょ。え?意味わかんない。ハア?』とか言われちゃいます。
なぜ上司は素直に送り出してくれないのでしょうか。
今回は転職時や退職時に必ずといっていいほど発生する『引き止め』について考えてみます。
なぜ会社は辞めるあなたを引き止めるのか
そもそもなぜ会社を辞めるというだけで、そこまで引き止められなければならないのでしょうか。
職業選択の自由があるわけですから別に好きな会社に行ったってなんの問題もないわけです。
もちろんそれまで一緒に働いてきた仲間ですから、今後も一緒に働いていきたいというのは極自然な感情です。
しかし、多くの場合は残念ながら『もっと一緒にいたい』という理由だけであなたを引き止めるわけではありません。
というかそんな理由はわずかです。いや、もしかしたら0かもしれません。
会社(社長や上司)があなたを引き止めるのはもっと別の理由があるのです。
それは単純にお金の問題です。
サラリーマンをやっていると中々イメージが湧きづらいのですが、企業にとって『新しい人を見つけて面談し雇い、そして実際に利益を生み出してくれる』までの工程はとても長い道のりなのです。
採用に関わるコストというのは、正直言ってバカになりません。
状況やタイミング、新卒中途の違いによりかなりバラつきはありますが、目安として1人あたり給料の半年分くらいの初期投資がかかります。
1年位で辞められては赤字ですし、安定して稼げるようになれば後は働けば働くだけ給与以上の利益を生み出すようになります。
いわば金の卵を生み続けるニワトリですから決して手放したくはありません。
だから会社は必死になってあなたを引き止めるわけです。
退職願いの撤回は絶対ダメ!きっと後悔しか待っていない
退職願をだした、あるいはその意思を伝えた段階で引き止めのために様々な理由をつけて説得にかかるでしょう。
場合によっては威圧的な態度を取ってくることもあるかもしれませんし、まるであなたがとんでもない常識はずれの悪人のように言ってくるかもしれません。
あるいは情に訴えるように懇願したり、心底がっかりした様子をみせてくることもあるでしょう。
これらの説得工作によってもしかしたら気持ちが揺らいでしまうかもしれません。
『そこまでいうなら今の会社に残ろうかな』『せめて今の仕事が一段落するまでは続けようかな』こんな風に思ってしまうかもしれません。
しかし退職を撤回することは絶対に避けるべきです。
ほぼ間違いなく後悔します。
これはあなたが退職する理由を考えればわかることです。
なぜならあなたが退職しようと考えたのは『その会社に不満がありそのまま続けても(そう簡単には)解消されない』と考えたからですよね?
それは待遇であったり人間関係であったり仕事内容であったりするでしょう。
今のままここに残っていてもダメだ、と考えたから新しい環境へ移ろうと思ったはずです。
たとえ上司が色々な理由で説得してきても、ほとんどの場合あなたの不満が解消されることはありません。
退職の意志が揺らぐのは『不満に目を背けたり諦めたりして自分の心に折り合いをつけようとしている』だけの話です。
根本的な解決には何もなっていないのです。
もし、上司が説得ではなくこちらの不満を真摯に受け止め改善するという交渉のテーブルにつくのであればまだ可能性はあります。
海外の場合は退社の意思を伝えると会社側が待遇面や環境面の条件改善の打診をしてくることが多いそうです。
これはcounter offerといっていわば条件改定による再契約交渉と言えるでしょう。
日本ではこういった取引はあまり一般的ではありませんね。
多くの場合『改善を検討する』『改めて見直しする』などの口約束で終わるだけです。
退職時の上司の引き止めにありがちなパターン8選の本音
ではここからは実際に上司からの引き止めのセリフでありがちなことと、その本音をまとめてみます。
この手のセリフをきっと一度は耳にするのではないでしょうか。
1.『○○君には期待してたんだけどな』
本音:○○君には(会社にとって都合よく使えそうだという)期待をしていたんだけどな。
『え、実は僕のことを評価してくれてたのかな・・・』
『期待を裏切ってしまった。そうまでして転職すべきなのかな・・・』
というように考え直すことを目論んだ一言です。
別に将来会社を背負うエース社員になることを期待しているわけではなく、より扱いやすく、より会社に利益をもたらしてくれることを期待されています。
ある意味で最も本心に近い言葉ですね。
2.『そろそろ次のポジションを考えてた』
本音:そろそろ次のポジションを考えていた(だけで昇格させるとは言ってない)
この場合、名ばかり店長のように実際にリーダーやマネージャの役職を与える場合もあります。
ITエンジニア系の場合、名刺上の肩書にはリーダーなどの役職を与えつつも特に給料は変わらない(あるいはほんの僅か)というパターンも横行しています。
ある程度役職を与えることで帰属意識を高くさせ、さらに辞めづらくさせるという思いもあると思われます。
実際、役職者のほうが退社し辛いというデータもあるようです。
もちろん実際には全く何も考えていない場合も多々あります。
3.『責任を持って最後までやりとげるべきじゃないかな』
本音:責任を持って(俺様が決めた予定通りに)最後までやりとげるべきじゃないかな
これはあなたを悪者に仕立て上げることで『辞める方が非常識』という思考を植え付けようとする悪質な手口です。
経験上これを言ってくる人間は完全にパワハラ思考ブラック思考の持ち主なので、もしこのセリフが出た場合『あ、絶対やめよう』とその意志をより強固にすべきです。
まともに相手にすると猛烈にめんどくさいタイプなので、基本的に何を言われても柳のようにスルーしましょう。
4.『次の後任が見つかるまで少しだけ待ってほしい』
本音:次の後任が見つかるまで(あと数年と)少しだけ待ってほしい
これはSIer系の会社(とくに客先常駐の案件)では極めて高確率で言われる定番のセリフですね。
あなたが辞める意思を伝えると、上司はその瞬間とにかくいかにして現状の契約を継続させるかを脳みそをフル回転させて考えます。
もちろん代理の人員を探すということも選択肢の1つに考えますが、あなたがそのまま継続してくれることが一番楽です。
ですからとりあえず『保留』という形で引き伸ばしをはかります。
一見するとこちらの意思を尊重しつつ大至急人員確保するという建設的な意見に聞こえますが、ずるずる引き伸ばされる可能性が非常に高いので安易に応じるのはかなり危険です。
5.『今やめたらもったいないと思うよ』
本音:今やめたらもったいないと思うよ(主に会社にとって)
実際にその仕事をやり遂げることで大きくレベルアップできる様な環境やタイミングは少なからずあるでしょう。
上司が本当にあなたのことを考えてこのセリフを言ってくれる場合も0ではありません。
しかし、それ以上に会社にとっての機会損失を考えたセリフであることが多いのが事実です。
先程も言ったように経営者にとって従業員は会社に利益を生み出すありがたい存在ですから、いなくなれば非常にもったいないと考えるのが普通です。
今の仕事を続けて得られるものはなんなのか、本当にその仕事を続けることで自分にとってメリットが有るのかしっかり考えましょう。
6.『周りにも迷惑をかけることになるよ』
本音:周りにも(主に俺に)迷惑をかけることになるよ
これも3の『責任を持ってやり遂げるべき』マンと近い思考パターンです。
確かにあなたが抜けることで多くの場合一時的に戦力ダウンになりますから、残された同じチームメンバーの負荷が一時的に上がることは確かでしょう。
しかし、それは周りに迷惑をかけるなどという行為では決してありません。
現場の人間に負荷がかからないように調整するのはあくまでも会社の責任です。
本来であれば代理の人間を確保出来るようなチーム体制を組むべきですし、バックアップメンバーを補充できる仕組みづくりをすべきです。
ですので「いや、宣言してないで迷惑をかけないようにすぐに代理の人間を手配してください」と言い返せれば100点ですね。
7.『そんなんじゃ他の会社に行っても通用しないよ?』
本音:そんなんじゃ他の会社に行っても通用しないよ?(主に俺は)
あなたが転職することを一種の裏切りのように感じる人もいます。
その様なタイプはこんなセリフをいうでしょう。
また、自分が転職するという選択肢がなくその会社にずっと根をはっているつもりなので、ある意味で自由に転職するあなたに嫉妬しているのかもしれません。
そもそも通用するかどうかはこれからのあなたの頑張り次第です。
8.『事前に相談すべきだろう。いきなり言われても困る』
本音:事前に相談すべきだろう(そしたら言いくるめられたのに)。いきなり言われても困る(俺だけが)
大抵の場合、上司にとってはいきなり部下から退職の意志を告げられることになります。
すると『いきなり退職ではなくて事前に相談しろ』という趣旨の発言をしてきます。
そもそも相談をしない時点でその上司に対する信頼関係は無いということなのですが、上司本人は絶対に気づきません。
まあ仮に相談しても結果は変わらないでしょうが。
悩むのはもっと前の段階。報告するときは退職の意志を固めておくこと
さて、というわけで引き止め時にありがちなセリフとその本心をまとめてみました。
退職の際に最も重要なことは確固たる自分の意志です。
本当にしっかりと考え抜いた上で退職を決めたならば、何を言われても悩むことはないでしょう。
逆に言えば退職の意思を伝える段階では悩み抜いた上で結論をだし、不退転の覚悟で伝えるべきです。
仮に引き止めに応じて残ったとして、会社からはあなたはいつ再び辞めるかわからない要注意人物と捉えられます。
そうなれば働きづらいだけでなく、仕事上のチャンスも得にくくなってしまうでしょう。
同時にせっかくの転職のチケットもみすみす手放すことになるのです。
今回はあまりにもデメリットが多い『退職の撤回』についてお伝えしました。
ぜひ参考にしてみて下さいね。